小さき花の詩vol.4

Saori Kitamura
北村さおり ソプラノリサイタル小さき花の詩vol.4
~八王子で楽しむドイツ歌曲~

八王子いちょうホール 小ホール
2012年6月30日(土)
14:00開場 14:30開演

ピアノ: 東 由輝子

program
モーツァルト W.A.Mozart (1756~1791)
〈ゲーテの詩による歌曲〉
・すみれ Das Veilchen K.476 

シューベルト F・Schubert (1797~1828)
〈シュレーゲルの詩集「夕映え」による歌曲〉
・ 夕映え Abendröte D690
・ 蝶々  Der Schmetterling D633
・ 鳥   Die Vögel D691
・ 少年  Der Knabe D692 
・ ばら  Die Rose D745
・ 少女 Das Mädchen D652
・ 星   Die Sterne D684
・ 流れ Der Fluß D693

シューマン R・Schumann(1810~1856)
〈リュッケルトの詩による歌曲〉
・ まつゆき草   Schneeglöckchen op.79-27
・ ジャスミンの茂みJasminenstrauch op.27-4
〈アイヒェンドルフの詩による
歌曲集「リーダークライス」作品39より〉
・ 異郷にて In der Fremde op.39-1
・ 間奏曲Intermezzo op.39-2
・ 森の対話 Waldesgesprach op.39-3
・ 月の夜 Mondnacht op.39-5
・ 春の夜Fruhlingsnacht op.39-12

R・シュトラウス R・Strauss (1864~1949)
〈ダーンによる歌曲集「乙女の花」作品22〉
  1 . 矢車菊 Kornblumen
  2 . けしの花Mohnblumen
  3 . 木づた Epheu
  4 . 睡蓮 Wasserrose



ちいさきはな・・・のごあいさつ            
「小さき花の詩」とは留学中の2005年から始めた私のブログのタイトルでもあります。
聖書に「思い煩うな。野のゆりを見なさい。つむぐことも織ることもしない」とあるように、またカトリック教会の聖人である小さき花のテレジアが生きた「小さな道」に習い、「何か立派なことをしようとするのではなく、神様(音楽)の前では最も小さなものでありたい」という思いを込めて2008年の4度目のリサイタルよりタイトルに取り上げました。

ブログでは留学日記のようなことから始まり、映画の感想、日常のあれこれまで、励ましのお言葉を頂きながら綴っていました。そうして自分の考えを見つめ、整理する中で新たな自分の発見もあり、多くのことを学ばせて頂いたように思います。やがてブログで発信していた「わたし」を、「音楽」で発信・交流していきたいと思うようになり「リサイタルシリーズ・小さき花の詩」が始まりました。

私も二人の娘の母であり、仕事を掛け持つ主婦ですので、日々の暮らしの中で音楽の研究を継続していくことに心折れることもありますが、「小さき花の詩」を目標に、これまでがんばってこられました。

そして今日、いちょうホールで「小さき花の詩vol.4」を開催できますことを心より感謝申し上げます。「小さき花の詩」を八王子で、と決めてから、より自分らしく、肩の力を抜いた勉強ができるようになったと感じています。
平行して行っております「ロマンティックコンサート」は、八王子ゆかりの若手音楽家を支援する「郷土の響き」への出演をきっかけに、より親しみやすいコンサートを目指して始まり、今年2月の椿姫ハイライトでも大変ご好評を頂ました。

今後、この二つの公演を中心に1年に2回のコンサートを八王子で目指していく予定です。今回は都合が合わずお越しになれなかったお客様にも「また今度!」、今日お越し下さったお客様にも「よかったわ、また今度!」そう、お声をかけていただけるように、がんばりたいと思います。            
                     


ドイツリートをお楽しみいただくために・・・ちょっと難しい話・・・
ドイツリートとはなんぞや。その昔、論文執筆にむけ「ドイツリートの定義」とやらに必死に立ち向かったこともあったが、今も昔もよくわからず、「・・・つまりはドイツ語の詩を歌詞とする歌曲」としか述べようがない。ただ、オペラやオラトリオの独唱部分、つまり「アリア」と「歌曲」とは明確に区別して呼ぶ約束事がある。だが、その「詩」は、オペラのような戯曲の中の登場人物による独白、「魔王」に代表される短いお話、ストーリーを持つ連作で書かれた詩集、詩人の一瞬の心情を描いたもの、民謡や童謡、近現代の歌曲も含めると状況は様々。
だが本日演奏するドイツリートの共通項は「ロマン主義」ということだ。それまでの古典主義における調和や形式、教養を重んじていた時代から、「自我」の時代へ移り、作家達は「自分探し」の産物として「詩」を生み出し、作曲家たちはそれに共振した。革命後の時代の変化に伴い、宮廷主導の大きな劇場、つまり公共の場だけでなく、裕福な庶民や知識人によるプライベートな集い、いわゆる「サロン」におけるコンサートが重役を担うようになる。モーツァルト以後の作曲家たちは、まさにそんな時代に生まれた作曲家たちであり、シューベルトは詩の持つ抑揚や韻律、雰囲気といった詩の特徴をメロディーに反映させるだけでなく、詩の心に寄り添い、聴く人の心に語りかけるような歌曲作品の多くを「サロン」で発表していき、ドイツリートという分野を確立していったのである。
その後を引き継ぐのはシューマンであるが、彼はロマン派たる夢・幻想・人の内面の躁鬱を音楽で実現しようとしていた。しかし精神病を発症し入水自殺をはかったのちは精神病院で晩年を過ごす。シューマンと妻クララの恋愛物語は非常にドラマティックで有名だが、結婚の年には爆発的に多数の歌曲を書き、「歌の年」と呼ばれる。リーダークライス作品39番もその年に作曲された連作歌曲だ。詩の選定はシューマンによるもので、詩人の意図による連作ではない。
シューマンの歌曲は伴奏の域を超えるほど、特に前奏後奏で、詩の持つ世界観をロマンティックに語るピアノ伴奏部が特徴である。それはシューマンの文学への洞察の深さの現れであろう。この旋律と伴奏という概念を超え、どちらもが詩に寄り添い、「詩、旋律、伴奏」が三位一体のごとくに対等であることがロマン派におけるドイツリートの重要な特徴であるが、そこでは「声」の存在は当たり前に要求されてはいるものの、前面にアピールされるものではなく、恐れずにいえば言葉の邪魔にならないことのほうが重要なほどだ。
ところが後期ロマン派最後の作曲家リヒャルト・シュトラウスの手にかかると、それがどうでもよいことのように感じてしまうのだ。言葉は旋律に融合されてしまい、その発露は「声」に委ねられる。肥大した伴奏部は、違った意味で、もはやピアノ伴奏の役割ではない。
ロマン派以降の調性の崩壊と新しい和声概念を経験し、作曲技法はもはや「時代」ではなく、趣向的選択となった時代に、彼の選択した歌曲は、ドイツリートの定義に外れる「ロマンの香りのする歌曲」であるのかもしれないが、しかし、どうであろう、聴き終えてみれば、それは確かに後期ロマン派であり、ドイツリートなのである。



詩人についてのミニ知識   
          
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe,1749 -1832)
「すみれ」にモーツアルトが作曲する際、実はゲーテによるものと知らなかったらしい。だからなのか、最後の「かわいそうなすみれ・・・」という部分はモーツアルトが書き加えたものである。

フリードリヒ・シュレーゲル(Karl Wilhelm Friedrich von Schlegel, 1772-1829)の詩集「夕映え」から、シューベルトは時期を違えながらも11曲に作曲した。しかしそれらをまとめて歌曲集にしようという構想はなかったようだ。

ヨーハン・ミヒャエル・フリードリヒ・リュッケルト(Johann Michael Friedrich Rückert,1788-1866 )は美しく親しみやすい詩で、多くの作曲家にも愛された。シューマンもそのひとり。

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ(Joseph Karl Benedikt Freiherr von Eichendorff,1788-1857)による「リーダークライス作品39番」。第1曲、2曲、3曲、5曲、12曲を抜粋して演奏する。

フェリックス・ダーン (Felix Dahn: 1834-1912) は、少女を実に生き生きと、そして表情豊かに4種の花に喩えた。その花を愛でる視線は愛情深く、官能的でもある。


 ◆最後まで読んで頂きありがとうございました。今日は日本語訳の朗読を挟みながら演奏いたします。難しいことはひとまず置いて、時空を超えて、詩人、作曲家たちの鼓動を、息遣いを演奏者である私たちと一緒に感じていただけましたら幸いです。          ・・・北村さおり

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by saori-kitamura | 2012-07-04 14:57 | リサイタルの記録 | Trackback | Comments(0)

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